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Leadership
Management Development

【Column】「自律的に仕事を進める力」を育てる2つのヒント

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Published: November 15, 2024
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2024.11.18

「社員/メンバーには、仕事を自律的に進める能力を高めて、仕事の範囲を広げていってほしい」。人事担当や管理職に就き、育成サポートをしている方からよく聞くお言葉です。一方で、任せた仕事を納期ギリギリまで塩漬けされてしまう、期限当日にアウトプットが出てきて、結局イチからやり直しの指示となる。もっと周囲の人の力を活用してほしいのに、そのためのアクションが見られない。事の大小はあれど、そんなお話もよく耳にします。 

メンバーがひと仕事をやり遂げる能力を高めていく。そのために、どのような支援が後押しとなるのか。今回は、私が上司や仲間から受けた支援を振り返りながら、そのヒントを考えてみたいと思います。 

ひと仕事をやり遂げる。前提として、まずは「仕事の与え方が適切か」という観点があります。本人の理解度や習熟度から鑑みた仕事の難易度や、進めるにあたっての報告頻度などが、適切に設定されていることは重要です。能力開発の観点では、すでに細分化されたタスクを与えられ、粛々と終わらせることを求める環境では、「自分でプロセスも描きながら、ひと仕事をやり遂げる」という発想自体が生まれにくいかもしれません。 

部分を見て動くタスクシュートだけでなく、仕事の目的や全体像を見てプロセスを描き、進める。仕事の与え方が適切だとすると、次の観点として、仕事の塩漬けや大幅な手戻りを招く要因の一つ「本人の考え方のクセ」の確認も有効かもしれません。振り返ると、私自身も仕事を止めてしまっていた経験があります。その時は、「周りにできないと思われたくない」「みんな忙しい。手伝ってほしいと言えない」「結局は人に任せるよりも、自分がやった方が速い」などの思い込みがあったように思います。 

今回、これら思い込みのハードルを超えるヒントになる、と感じたのが、私たちが取り入れている「壁打ち」ミーティングと、社内の「サポート+ヘルプシーキング」チャネルの活用です。以下、少しご説明させてください。 

以前、ある案件のリサーチと意志決定をするプロジェクトの推進担当となりました。この案件は、過去自部署で進めようとしたものの、事情によりストップした経緯がありました。その後、上司や部署の体制変更なども起こり、過去の経緯を知らないメンバーも増えてきました。そして案件の再開にあたって、応用できそうな過去の事例も見当たりませんでした。そこで、担当となった私は「過去の経緯を一番知っている私が、『ひとりで全部やらなきゃ病』」にかかってしまったのです。プロセスが明確に描けていないにもかかわらず、そのうちじっくり考えようと抱え込み、繁忙を理由にTODOリストの最下部に押し込んでしまいました。 

この事態に気づいた上司が提案してくれたサポートが、「壁打ち」でした。このミーティングで、上司は「そもそも何を解決したいの?」「論点はいくつあるの?」「何から解決していけばいいと思う?」と問い続けてくれました。上司と話す中で、手元にある情報の整理と言語化が進んでいき、また検討が不足している箇所を見出していくことができました。そうすると、ミーティング開始前は「もう八方ふさがりだ」と感じていたのに、終わってからは「まだこの選択肢を試せていなかった。次はこれをやってみよう」と自分で次の答えを見つけ出したような晴れ晴れした気持ちになり、次のタスクを進めることができるようになりました。 

こうした、いわゆる「壁打ち」ミーティングを、インパクトでは「That’s So」(ザッソウ:雑な相談)と呼んでおり、ひとりで考えてスタックした際には、直ちに壁打ち相手をインバイトすることが推奨されています。案件によっては、相手にとっても、経験したことない案件相談となることもあり得ます。しかし壁打ちの効果は、相手に答えや解決策を教えてもらうことではないと感じています。頭の中の言語化を通じて、情報や状況を整理し、次の一歩を見出して、自分で決めて進めてみる。そのために上司や同僚という資産を壁打ち相手として活用するのだ、と感じました。この経験が積み重なることで、壁打ちのスキルが上がっていくと、進められるひと仕事の範囲が一層広くなると感じています。またどれだけ初期にこの場を持てるか、が案件の進捗を決めるとも猛省しています。 

実際にリサーチを動かすにあたっては、社内の「サポート+ヘルプシーキングチャネル」を活用しました。要素を網羅的に捉え、段取りを細分化し、適切な時系列に並べて実行していく。その際、すべてのリサーチをひとりで進めようとすると、私の稼働時間がボトルネックとなるとわかりました。今回のリサーチは、深さよりも広さが重要なものだったため、Teamsのチャネル上で、社員全員に情報提供を依頼しました。 

インパクトでは、本件以前から、「この情報を探しています」「ちょっと相談!」というやりとりを投げかけるため、このチャネルを使っています。敢えて、単なるヘルプシーキングチャネルではなく、サポートと名前につけている理由。それは、私のように、これまでやったことがない案件や自身の能力開発に関わるチャレンジをしている仲間へのサポート(支援)を推奨している姿勢の表れです。確かに、ちょっとした困りごと、情報収集でも、このチャネルをうまく使っているメンバーがおり、そういうひとは仕事の進め方も上手だな、と感じています。 

改めて、メンバーが自律的にひと仕事をやり遂げられるようになる、その能力開発支援のためには、仕事の与え方以外にも、周囲のサポートの仕組みを用意することができそうです。ひとつは、早期のミーティングで、案件の目的やゴール状態、進め方などを、相手に壁打ちしてもらいながら固めていくこと。いわゆるフロントローディングな進め方の推奨です。もうひとつは、進めるうちに明らかになる制約について、ヘルプシーキングの声を上げられる場所や環境、サポート文化を整備すること。ある本には、ヘルプシーキングは、個人だけではなく、組織やチームで求められる、成果を出すためのビジネススキルである、と定義されていました。

フロントローディングとヘルプシーキング。社歴や経験に関係なく、この2つのアクションを取り、目的のために仕事を進めるメンバーが多いチームは、自律的で強いチームと言えそうです。より難易度の高いひと仕事をやり遂げる力を高めていけるよう、私自身も組織のサポートを活用し、また次の世代のメンバーのサポートもできるよう、引き続き挑戦していきます。 

*参考文献:小田木朝子(2022)「仕事は自分ひとりでやらない」フォレスト出版 

(Written by Yuki, Quality Controller, Client Success Dept.)