2024.4.8
インパクトジャパンのインターンシップ「BACKSTAGE(バックステージ)」。
「BACKSTAGE」とは、あしなが奨学生である大学2年生以上を対象としたプログラムです。弊社が取り組む、1)若者支援団体への寄付、2)団体から支援を受ける若者への研修のプロボノ提供という、「リーダーシップ・エコシステム®」の一環として取り組んでいます。若者が社会人としてのスタートをスムーズに切れるよう、「活躍しているビジネスパーソンのやりがいやジレンマを舞台袖から観ることで、社会人の先取り学習をする」ことをねらいとしています。
本コラムは、2023年度BACKSTAGE参加者の田中亜依さんがその気づきと学びを綴ったものです。
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■失敗は、避けなくてもいい
失敗から生まれるもの。社会人がリーダーシップを学ぶ姿を見ての発見
BACKSTAGEインターン生として、今回リーダーシップ・オープンプログラムをオブザーブして発見したことがあります。それは、「社会人のやりがいは、失敗から生まれる。だから失敗を過度に避けなくていい」という点です。そう感じたきっかけは、研修全日程を通じて見た、参加者の皆さんがどんどんプログラムにのめり込んでいった姿でした。
今回のプログラムは、公開型のリーダーシップ研修でした。そのため、参加者のほとんどは別の会社から参加しており、キックオフ・モジュールは自己紹介から始まりました。その後メインのリーダーシップ・モジュールをオフサイト2泊3日で実施し、約1か月後、再び対面で1日フォローアップ・モジュールを行う、全日程約5日間の研修でした。
特に泊りがけのリーダーシップ・モジュールの場で、参加者は様々なプロジェクトに取り組みました。実は、今回オブザーブして目にしたのは、多くのプロジェクトで「あと少しなのになかなか達成できない」シーンでした。残念ながらプロジェクトは未達(失敗)です。しかし、そこで興味深いことが起きました。
失敗の先へ進むには。オブザーブとインタビューから得たヒント
参加者は、リーダーシップテーマを持ったメタファー的なプロジェクトに取り組むうち、どんどん前のめりになっていきました。プロジェクト自体は失敗という結果にもかかわらず、です。休憩時間にも、自主的にチームで改善点を話し合ったり、夜それぞれの部屋へ戻ってからも、どうすれば達成できるのかと、考えをめぐらせていたのです。達成できない悔しさを共有したチームが、「次のプロジェクトこそ成功させよう」と一丸となって取り組んでいた姿が非常に印象に残っています。それは、私から見ると、「プログラムを自分ごと化している」ように感じられました。
一般的には、失敗はネガティブなものと捉えられているのではないでしょうか。できれば失敗は避けたい。多くの人がそう考えたとしても不思議ではありません。インターン参加前の私も、漠然とそう捉えていました。しかし、研修オブザーブで見たもの、そしてフォローアップ・モジュール後に実施したインタビューで聞けた話はその一般的な認識とは逆でした。
研修に参加された、ある人事のご担当者は、「失敗を繰り返した結果、成功につながるのであれば、それは失敗ではない。そう考え、仕事をしている」というお話をしてくれました。「失敗をしてしまった時に、そこで落ち込んで立ち止まってしまうと、それはただの失敗にしかならない。でも諦めずに、向き合い、やり抜くことが大事だ」と言います。そしてやり抜くために必要なのは、「過去の成功体験だ」と教えてくれました。
私がオブザーブの場で見たのも、失敗への恐怖だけに囚われるのではなく、うまくいかないことに悩みながらも、なんとか前に進もうとする社会人の姿でした。このインタビューのあと、将来リーダーとなるような方が見ているのは、一つひとつの失敗自体というよりも、その先にある成長ややりがいである。だから失敗から立ち直って、やり抜こうとすることができる、と納得しました。
「失敗」と「やりがい」を結び付ける3つのポイント
では、かけ離れているように見える失敗と、喜びややりがいを繋げるものは何なのでしょうか?そこには3つのポイントがあると感じました。
まず、失敗に種類があると理解することです。失敗には3つの典型があり、それは回避可能な失敗、複雑な失敗、賢い失敗と分類できると言います(*1)。つまり、失敗したからといって全てが悪いわけではありません。回避可能な失敗はもちろんですが、複雑な失敗も一つ一つの出来事や行動に注目することで回避できる場合もあります。一方で、賢い失敗は、新たな試みの結果生じるものです。この場合、失敗した結果自体が新たな発見であり、有意義な失敗だといえます。とはいえ一番は、どんな失敗においても、「何を学ぶか」に意識を向けるべきなのでしょう。
次に、失敗から成功への流れを、経験学習のサイクルに当てはめることです。経営組織論の松尾睦教授によると「ストレッチ」、「リフレクション」、「エンジョイメント」が経験学習の鍵となる3要素だと言います(*2)。目標に向かって少し「ストレッチ」して挑戦してみた結果、失敗する。その失敗から「リフレクション」して次へ向けての取り組みを考える。その過程に意味を見出して「エンジョイメント」する。ストレッチして失敗するからこそ、経験学習のサイクルが回り、喜びややりがいを見出すことにつながります。
最後に、時間軸を長く、しかし前向きな変化は細かく、捉えることです。前述のサイクルを繰り返していく中では、ほんの少しでも改善したことや自身の成長を感じられるはずです。その成長は、小さな成功体験となり、自信につながり、次の挑戦への原動力になるでしょう。目指す成果に達するまでの過程は簡単ではなく、失敗で落ち込むことや、一度や二度の挑戦ではうまくいかないこともあるかもしれません。しかし、諦めずに続けていくことで、成長し、そしていつか成功につながるのだと、今回のインタビューを経て感じました。そして、ふと、私自身が今行っている課外活動でも同じことが起きている、と感じました。
私は現在、中高生向けの体験プログラムを企画・運営する会社で長期インターンをしています。あるとき、一段と自律的に進める必要のあるプログラムに携わりました。それまでのプログラムと比べて裁量権が大きくなった反面、なかなか思い通りにできず、とても悩みました。時には、失敗する事態を避けたい、と弱気にもなりました。でもこの活動は、私が高校生の頃に参加して、とても感銘を受けた思い入れのある活動です。そのため投げ出す選択肢はなく、社員の方や先輩インターン生にアドバイスをもらいに行ったり、自己分析して、自分に合った進め方を考えたりしました。そうして試行錯誤していくうちに、上手くいった感触を掴めた時は、大きな嬉しさを感じると共に、周りを巻き込みながら、失敗から成功までなんとか持っていくことができたという自信も生まれました。
オブザーブ経験を振り返って
今回のオブザーブは、社会人の生の悩みや苦労に触れる貴重な機会でした。参加する中で気づいたのは、働く中ではうまくいかないことも多くあるけれど、今、大企業や成功者とされる人は、それらを乗り越えてきているのではないか、という点です。そして、うまくいかないからこそ、試行錯誤して取り組んでいく中でやりがいが生まれ、挑戦が続くのだと感じました。
失敗は決してネガティブなものではなく、そこには、楽しさや喜び、そしてやりがいを生み出す大きなポテンシャルがある。失敗とうまく向き合うことで、それを引き出すことができる。だから失敗を過度に避けなくてもいい、とオブザーブを終えた今、強く感じています。今回、こうして社会人が悩む姿を近くで見たこと、参加者の皆さんと一緒にリーダーシップについて考え学んだこと、そしてこれまでの経験がうまく重なり、「失敗」について私なりの考えを持つことができました。
この経験を、現在取り組んでいるあしなが学生募金や長期インターンでの活動、そして将来の仕事にも役立てていけたらと思います。
参考文献:
*1 エイミー・C・エドモンドソン(2021)『恐れのない組織』.英知出版株式会社
*2 島津製作所 広報誌「ぶーめらん」(2017)シリーズあしたのヒント.「経験学習」で育て上手な上司に。社内の人材育成に必要な要素(2024.3.29取得:https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/37/07.html)
(Written by 田中亜依、BACKSTAGE2期生)