2021.05.25
リモートワークが主流になり、はや1年が経ちました。当社は10年以上前からwork from everywhereの働き方に取り組んできました。しかし、ここまで長い期間、自由にオフィスで上司や同僚と働く機会が制限される状態が続くとは想像もしていませんでした。
リモートワーク体制は、社会的にも各企業内でも順次整いつつあります。
しかし若い世代の「テレワークやめたい」という声*1や、管理職層の「時間の経過とともに慣れると思ったが、逆にしっくりこない度合いが増している」「何か、すり減っている感じがする」という言葉を耳にする機会が増え、改めて「オフィス」をはじめとしたリアルな場のもたらしていた価値や、もっと大きな意味では「働くこと」が水面下で問い直されているように感じています。
リモート環境で特に見えづらくなるのは、職場の背景情報や仕事の文脈(コンテクスト)です。
毎日、オフィスに通勤して顔をつき合わせ、共に仕事をしていたら自然と入ってきた情報から遮断され、インフォーマルな交流が減り、組織のソーシャルキャピタルの性質が変化している。そんな記事がハーバード・ビジネス・レビューに掲載されていました*2。
・ソーシャルキャピタル(社会関係資本):信頼、規範、ネットワークのストック
・何かに行き詰った時、誰かがそうする責任はないのに助けてくれる
・予定外の交流を通じて、親密さと好意の基盤が作られる
・知識や情報の流れを促進し、新しいアイディアを刺激して、私たちの思考を活性化させる
私たちも組織として、各々が自宅から仕事をするリモート環境下で、社会関係資本を増やすチャレンジを行っています。その中で強く意識しているのは「価値のある雑談の機会を増やす」という点です。雑談を増やし、その質を上げるため、この1年間取り組んできたことをご紹介します。
■価値のある雑談を生み出すために:Monday Morning Meeting(MMM)での取り組み
まずは、雑談の機会の確保のため、毎週月曜日の朝MMMを行い、週1回は全員が顔を合わせる場を作りました。開始当初、MMMは「今感じていること、考えていることなんでもシェアし、今週の業務予定を共有する」というグラウンドルールでした。全員のオンラインでの発話のハードルを下げることから始めています。また、雑談をテーマにしたオンラインワークスペースを利用するなど、目的に合ったツールの変更も行いました。
そして今年からは「雑談の質」を上げていくため、新たに雑談にテーマを設けました。テーマは「My Vision/Dream/Wish」。事前にシートに入力を行い、MMMでは3人程度の小グループで10分程雑談する形式を取っています。
My Vision/Dream/Wishシートに入力された内容や粒感は人それぞれ、非常に多様です。明確なキャリアビジョンもあれば、今はまだ漠とした興味だけれども、将来的には大きな夢も。また、プライベートでの夢や希望から、人となりや意外な趣味が見え、新たな雑談のきっかけになることもあります。
またこの取り組みでは、毎週のMMMで同僚と話した後、自身の記載内容の修正や追記を推奨しています。最初は、個人的なビジョンを公表することにためらいのあったメンバーの記載項目が翌週大幅に増えていたり、ある人の移住候補先の国名が具体化していることもありました。
まさに、記事にあったように「知識や情報の流れを促進し、新しいアイディアを刺激して、私たちの思考を活性化させる」ことが、毎週月曜日の朝、すこしづつ起きていると感じています。このつながりは、「相手の役に立つ情報」という観点を与え、そのやり取りを通じて信頼を積み上げ、共に仕事に取り組む基盤を強化していくと考えています。
リモート環境で、社会関係資本が自然に積みあがることはほぼない、むしろ目減りしかねない、と痛感した1年でした。「意図を持った場づくり」とともに、自社のコンテクストに合った形での設計・運用ができるよう、引き続きトライをし続けたいと思います。
参考:
*1 「テレワークやめたい」20代が最多 67.4% 上司・部下ともに「気軽に相談できない」に悩む 若手社員とのコミュニケーションには「チャット/SNS」が有効?|あしたのチーム調査リリース 2021年5月18日
*2 在宅勤務は職場の人間関係にいかなる影響をもたらしたか|ハーバード・ビジネス・レビュー 2021年5月20日(HBR.org原文:What a Year of WFH Has Done to Our Relationships at Work, March 22, 2021.)