2024.4.8
インパクトジャパンのインターンシップ「BACKSTAGE(バックステージ)」。
「BACKSTAGE」とは、あしなが奨学生である大学2年生以上を対象としたプログラムです。弊社が取り組む、1)若者支援団体への寄付、2)団体から支援を受ける若者への研修のプロボノ提供という、「リーダーシップ・エコシステム®」の一環として取り組んでいます。若者が社会人としてのスタートをスムーズに切れるよう、「活躍しているビジネスパーソンのやりがいやジレンマを舞台袖から観ることで、社会人の先取り学習をする」ことをねらいとしています。
本コラムは、2023年度BACKSTAGE参加者の西村恵さんがその気づきと学びを綴ったものです。
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■「大学生のうちに楽しめ」は本当?愉しい社会人生活を形作る信頼関係の築き方:
「社会人」は、やりたいことができない?
大学は人生の夏休みという言葉をよく耳にします。「やりたいことをやれるのは今のうち」、「今のうちに楽しんでおけ」、大学生になると次第にこのような声は大きくなり4年という長いようで短い日々をどう楽しむかに全力を注ぐようになりました。その一方で、次第に「社会人になると楽しいことはできない」「社会人はやりたいことができない」という社会人に対するマイナスイメージが蓄積されていきました。
私が通う兵庫県立芸術文化観光専門職大学は2021年に開学したまだ生まれたての大学で、私はその1期生にあたります。1期生という特殊な環境では、ゼロからイチを生み出す機会が豊富に与えられ、挑戦環境が整っている一方、先輩がいない分、卒業後や社会という言葉への解像度が低い特徴があると感じます。ここで大学生活を送ってきた私は、「やりたいことをやれるのは今のうち」、「今のうちに楽しんでおけ」という言葉を現実味のない漠然としたイメージで捉えていました。
そんな私が、大学3回生となったこの冬にインターンシップBACKSTAGEにて、リーダーシップ・オープンプログラムをオブザーブする機会を得ました。そこで私は、新卒や若手よりもっと先の経験を積まれた「社会人」十数名と出会いました。私がはじめに驚いたのは、会社も立場も異なる社会人が、ご自身の仕事に誇りを持ち、熱く自社について語っている姿です。その生き生きとした姿に、社会人は楽しくないのではなかったのか、やりたいことができないのではなかったのか!と衝撃を受けました。初回を経て、私の持っていた「やりたいことができない社会人」像が崩れ始めていました。
初対面の大人が一晩で部活チーム顔負けの信頼関係を築く
プログラムは、プロジェクトと対話・内省を繰り返す形で進行するものでした。私がオブザーブしたチームは、初対面の社会人6名で構成されていました。プロジェクトが進行するにつれ、この6人の関係性はみるみる変化していきました。まず、お互いの人となりを知ることから始まりました。少しずつ、相手の特性や得意を知り、次第にコミュニケーションが盛んになりました。お互いのバックグラウンドや普段の仕事を知るタイミングで距離がより近くなり、気がつけば「信頼関係」が築かれたグループが生まれていました。チームの外からオブザーブしている私から見ると、プロジェクトを重ねるうちに、それぞれの考え方の癖を理解し、信頼できる間柄になったように見えました。
幸運なことに、フォローアップ・モジュールの場で、この仮説について参加された方にインタビューすることができました。その方からは、「数多くのプロジェクトをチームメンバーとともに取り組む中で、メンバーひとりひとりがどのように課題にコミットする人なのかを理解することができ、それが互いの信頼関係の構築に繋がった」というお話を伺うことができました。またフォローアップ・モジュールでは、アセスメントツールを用い、自分と相手にとっての適切なコミュニケーションについて考えるワークがありましたが、「一緒にプロジェクトを進めた仲間のタイプや響くコミュニケーションスタイルを知る中では、納得する部分が多かった」という声も出ていました。
「自分」と「初対面の5人」から構成されるグループ。それが、プログラム内にちりばめられたトライアンドエラーの機会を通じて、他メンバーのパーソナルな部分を知り、互いに対する解像度が上がり、信頼関係をもったチームになっていった。仲間と力を合わせて、より高い成果を上げるため、「自分」と「仲間」についてより深く知り、効果的にコミュニケーションをしていく。そんな好循環が生まれていました。
成果につながるチームビルディングのステップ
今回のオブザーブを通して、私はチームの信頼関係を構築するステップとして、以下の4つがあると気づきました。
- 相手の得意・不得意を知る
- 相手の課題に対するコミット姿勢を知る
- 自分と相手のコミュニケーション特性と、「伝わる」伝え方を知る
- 個人間での信頼関係をチーム全体の成果に広げる
1〜2までのステップは、これまでの部活や大学での組織運営の過程で、実感していたポイントを再度強く認識するものでした。一方3〜4は、現在、私が直面しているチーム活動における課題に大きなヒントを与えるものでした。これまで、大学の授業やサークルでチーム活動をする際に、苦戦する場面が多くありました。例えば、私からチーム全員に、一斉に同じ内容を伝えても個々の理解に差が見られることや、同じようにアイデアを求めても、その量や質に大きな差が見られることなどが挙げられます。プログラムをオブザーブする前、私はこれらは個人の力量だと考え、それぞれの持つ得意・不得意にマッチしないことはあるから、仕方がないと半ば諦めていました。
しかしプログラムを通して、人によって「伝わる」伝え方に違いがあることを学びました。勿論、得意や不得意もありますが、私がチームメンバーとのコミュニケーションの時間を十分に取り、それぞれの特性に合わせた伝え方をすることで、「伝わり方」の違いを狭めることができると学びました。そして、そうして個人間で生みだした信頼関係が、チーム全体のパフォーマンスに大きく影響をもたらすものであることを再認識しました。このように、今、大学生の私が直面している課題は、決して大学時代に限定されたものではなく、社会に出た後にも繋がるものであることを実感しました。
オブザーブ経験を振り返って
私はこのプログラムのオブザーブを通して、社会人のやりがいを見つけました。それは、自らの働きかけで変化するチームと、そのチームで乗り越える苦楽です。現在、私が大学で試行錯誤しながら感じる楽しさが社会に出た後にもある。決して、学生生活と社会人生活は切り分けられるものではないということ、そしてそんな仕事人生を楽しめるかどうかは、個々人にかかっていることを学びました。寝食を忘れて芸術にのめり込んだり、思い立って1週間旅に出たり、社会人が持つ責任は一見そのような大学生特有の「楽しい」を阻害するものにも見えます。しかし、社会人の「愉しさ」はむしろその責任が与えてくれるのではないかと、まだ社会を知らない私は漠然と考えるようになりました。
社会人がトライアンドエラーを繰り返しながら、信頼関係を構築していく姿を、今この時期にオブザーブすることができた、この貴重な経験に感謝するとともに、残り少ない大学生活と、その先にある社会人生活に活かしていきます。
参考文献:
・山岸俊夫(1998)『信頼の構造』.東京大学出版社
・ターシャ・ユーリック.2018“リーダーに不可欠な「自己認識力」を高める3つの視点”ハーバード・ビジネスレビュー. (https://dhbr.diamond.jp/articles/-/5215)
(Written by 西村恵、BACKSTAGE2期生)