2024.2.21
年が変わり、4月が迫ってくると、新人の配属やOJTトレーナーの選出に関する話題が出る機会が増えるようです。研修の現場でも「トレーナーによって指導にばらつきがあり、1年目社員の立ち上がりが全く違って、困っている」というお話を人事ご担当者から伺うことがあります。
このコラムでは、昨年の4月にインパクトに中途入社し、約1年間トレーニングを受けてきた私が効果を感じた「OJTトレーナー制度を用いて、効果的に新人を戦力化するために必要なこと」についてお伝えしたいと思います。
「OJTトレーナー」が必要な装備を持っているか?
今回の入社後OJTで新鮮に感じたことがあります。それは「新人に最も近い現場で、育成支援を行うOJTトレーナーを支援する環境を整える。彼らが活躍するための装備を持たせる。これこそが、新人の早期戦力化にとって、遠回りのようで近道である」という考えです。支援されるのは、自分のような新人であると思い込んでいたため、「OJTトレーナーを支援するとは?」と最初は不思議に思っていました。
しかし考えてみると、OJTトレー二ングとは、もともとの業務に育成業務が上乗せされるものです。そのため、トレーナー自身が時間の捻出が難しいなか場当たり的に教えたり、「とりあえず質問しながらやってみて」と新入社員に丸投げが起こる、などは、OJTあるあるなのではないでしょうか。
そうして育成がうまくいかないと、ついトレーナーの指導の仕方、あるいはトレーナーと新人の組み合わせなどに目が行きがちです。しかし個々人に要因を求める前に、「会社として、トレーナーを育成していく支援体制が整っているか」、この点を再確認することも、新人の育成と早期戦力化のポイントになるかもしれません。
ではトレーナーが、現場での新人育成に力を発揮できる環境、つまり持つべき装備とは、具体的にはどういうものでしょうか。ここでは、組織、少なくとも新人の所属するチームで明確に定めるべき2つの基準と、効果的だと感じるツールの使い方について、触れたいと思います。
トレーナーが力を発揮するための「基準」と「ツール」
まず一つ目の基準は、育成のゴール状態です。1年後にどのような状態になることをめざしているか、具体的には、知っておくべき知識、身に着けておくべき技術、身に着けておくべきふるまいや態度という3点について、明示されていることが望ましいです。このゴールがあることで、OJTトレーナーは育成全体像を意識しながら、自信をもって指導することができます。また新人にとっても「1年後にこうなってほしいから、このように指導している」とフィードバックを受けることは、指導内容に対する納得感を高めます。
二つ目は、業務手順書に示される基準です。ここでは業務の目的、目指す水準、作業手順など実務的な内容が明確に示されることが必要です。特に「この業務が行われる目的」と「期待される水準を実現できる明確な手順」は、新人の理解を確認し、必要があれば何度でも指導をするべき点です。これらは、業務品質を担保する要素だからです。
ちなみにインパクトでは、この業務手順書自体の作成や改定を、新人に担当してもらうことも多いです。「新人だから、マニュアルを見て」ではなく、「マニュアルを作って」というのは斬新でした。実際に取り組んでみると、マニュアル作成は、仕事に対する能動的な取り組みだと感じました。なぜかというと、マニュアルを作るためには、業務現場を観察し、手順が正確に伝わるようプロセスを分解したり、表現を考えたりする必要があるからです。また、新たな業務の手順書を作るため、先輩方にインタビューが発生したこともありました。これらを通じて、仕事の理解が深まったと感じています。新人だから、と受動的に教わるだけではなく、入社して日が浅い新人だからこそ気がついた点を改定に加えるなど、価値を発揮できたと感じられたことも手ごたえとして残っています。
その他のOJTトレーナーを支援する環境整備として、インパクトには、トレーナー向けマニュアルもあります。このマニュアルには、トレーナーの心構えや目的、目指すゴールが記されており、誰が指導をしても、同じ水準を満たせるよう、作成されています。同時に新人には、トレーニーノートが配られます。そこには、求められる業務習得の基準・水準が記載されています。これらの達成度合いを、実技試験なども通じて確認します。トレーニングプロセスを通じて、新人は求められる水準を把握するとともに、自身の成長も確認できる仕組みです。私も入社以来、いくつもの試験を受けました。残念ながら、一発合格ならず、再試験となったものもありました。率直に言うと、試験を受ける中で「ここまで細かいレベルで求められるのか!」という驚きもありました。しかしそれら試験があったからこそ、実際のモジュール現場では、正確に、確実に業務を遂行できたとも感じています。トレーニングを通じて、業務理解を深めるとともに、少しずつ自信を付けることができています。
育成される側としての成長実感
以上が、中途新人として約1年OJTトレーニングを受けた経験を振り返ったものです。まだまだ修行が必要ですが、先日はチーフ・コーディネーターとして主担当の役割を果たすなど、1人前に近づいている実感があります。そうした成長実感を持てているのは、OJTトレーナーである先輩社員が、前述の育成ゴールのために、業務手順書やトレーニーノートなどのツールを使って、サポートしてくれたおかげだと感じています。
新人の立ち上がり支援のために、まずOJTトレーナーが自信をもって指導できる環境を整える。OJTトレーナーにこそ、必要な装備を持ってもらう。インパクトでも未だ試行錯誤を重ね、改善を加えているオンボーディングプロセスですが、これら取り組みのご紹介が、新人の早期戦力化に取り組む人事の皆さんの参考になれば、幸いです。
参考文献:
関根雅泰, 林博之(2020)「対話型OJT 主体的に動ける部下を育てる知識とスキル」.日本能率協会マネジメントセンター
松尾睦 (2015)「OJT 完全マニュアル-部下を成長させる指導術」.ダイヤモンド社
(Written by Bacchi)
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