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【Column】パーパスブームに取り残されがちなひとつのこと ~個人のパーパス~

【Column】パーパスブームに取り残されがちなひとつのこと ~個人のパーパス~
Published: May 10, 2022
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2022.5.10

2021年度は「パーパス元年」 

2021年以前は4億件。2021年は40億件超え。 

この数字、何を表すと思いますか? 

「パーパス」という単語の検索結果の数です(1)。1年で10倍の情報量が発信された「パーパス」のブームに乗り遅れないようにと、世界中の企業がこぞって自社のパーパスを策定しました。2021年度がパーパス元年と呼ばれるのも頷けます。 

その背景には、企業に対して大きくなった社内外からの要請があります。環境問題を中心とした社会課題解決に向けた企業の取り組み姿勢や、SDGs経営の如何が、今や株価に直接影響するとも言われます。共感できるメッセージを好むZ世代が少子化の進む日本でも消費者層の中心となりつつあり、企業の社会的な取り組みは、特にB to C企業であればその業績に大きく関与します。JSBI(Japan Sustainable Brand Index)によれば、消費者のSDGsの認知度は2018年1月には9.3%だったのが、2020年には58.1%と右肩上がりに上昇(2)。この時流は企業の採用にも大きな影響を及ぼし、若者たちが、待遇より企業のSDGs経営を重要視する傾向が顕著になっています。一企業を取り巻く環境が大きく変化し、いよいよ企業の存在意義の再構築が必要になったというわけです。 

さて、自社のパーパスを策定すると、いよいよその社内浸透に乗り出す企業が多くあります。ここで注意したいのは、浸透させたいのは今期の戦略方針や重点商品の詳細ではなく、自分たちの組織がこの世界に存在する理由であり、意義だという点です。それは頭で理解するものはなく、心で共感する精神的なものだと考えます。もし社員が自社の存在理由に共感できなければ、日々の仕事は目的意識の持てないライスワーク(生活のためだけにする仕事)になってしまいます。モチベーションの維持が難しくなることは想像に難くないでしょう。 


個人のパーパスを持たないリーダーたち
会社のパーパスと従業員の成し遂げたいことがミスマッチの状態で働き続けるのは、双方にとって不幸であるとネスレ日本前代表取締役社長、高岡浩三氏は指摘します(3)。では、果たしてどれほどの従業員が「成し遂げたいこと」を明確に持っているのでしょう? 実は、世代によってパーパス意識には違いが見られるという興味深い考察があります(4)。転職業界では、ミレニアム世代やZ世代に比べてシニア・ミドル世代以上にはパーパス意識がない人が多いと言われ、それを裏付けするように、世のリーダー全体の2割程度しかパーパスを持っていないという調査データも存在します(5)。それはおそらく、ビジネスパーソンとして「社会のために何が出来るか」ではなく、「会社のために何が出来るか」という問いに必死に答えようとしてきた世代だからに他ならないと想像します。 

しかし、この不安定な時代にこそ、個人のパーパスを持つことは強みとなります。日々の仕事がそのまま自分のパーパスの実現につながると気づけたとき、その社員が思わぬ力を発揮する人材へと生まれ変わることがある、というのは前出の高岡氏の言葉です(2)。


個人のパーパスの見つけ方 
パーパスは、皆が生まれながらに持っているという考え方もあります。まずは自分と対話し、理屈抜きで情熱を感じるトピックを探してみる、つい心が動く社会課題を考えてみるなども有効でしょう。 
組織としての取り組みであれば、パーパスワークショップを実施するというのも一つです。インパクトでは先月、創業者のDavid Williamsに依頼し日本支社向けのワークショップを実施しました。35年前、彼がどんな想いでインパクトを創設したのか。社員の皆には、創設に至る創設者の想いの詰まったストーリーを聞き、自分が共鳴・共感した点を挙げてもらいました。創業者のパーパスつまり組織のパーパスと、社員である自分のパーパスとの重なりは、その組織で働く理由に直結し、やりがいに繋がり、組織と社員の関係の強化につながると思っています。(ワークショップの記事はこちらから) 

昨今は副業/複業、転職が当たり前の人材流動時代。自由に職場を変えることのハードルが低い今、人材を組織に惹きつけ続けるのは簡単ではありません。「私はこの会社を自分の居場所とし、ここで働いていきたい」という思いを持つ社員と、そのための器を提供する組織が同じ未来を見据え両輪となり前進していく、それがパーパス経営の在り方のひとつだと考えます。 


私個人の体験談の共有 
私自身、40代後半になってから初めて、自分のパーパスについて深く考える機会を得ました。ワークショップにもいくつか参加し書籍からのインプットを通して、自分の内なる声と対話できたことがとても意義深かったと感じています。それを皆さんと共有したく、本記事のテーマを選びました。 

自分のやりたいことよりも、仕事で成果を上げることの優先順位が高かった時代を駆け抜けてきた世代にとって、達成すべき売上目標や数値のない「個人のパーパス策定」は、大きなチャレンジであることは間違いありません。しかし、組織のパーパス経営を推進していく、または新しい人材を採用する立場のシニア・ミドル世代の皆さんこそが、まずはご自分自身のパーパスについて考えてみることが大切なのではないでしょうか。 

最後に、私が大好きなマーク・トゥエインの名言をご紹介させてください。 

The two most important days in your life are the day you are born and the day you find out why. 
人生で、最も重要な日は2日ある。ひとつはあなたが生まれた日、そしてもうひとつは、生きる理由を見つけた日だ。 


(1) 東洋経済オンライン(2021年12月22日)「今年最大の経営バズワード『パーパス』の本質 ―『新しい資本主義』の先の成長モデルを考える」、https://toyokeizai.net/articles/-/476454?page=2 (最終閲覧日:2022年4月28日) 

(2) SUSTAINABLE BRANDS 日本版(2021年6月9日)「特集:ジャパン・サステナブルブランド・インデックス(JSBI)」、https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1202898_1534.html (最終閲覧日:2022年4月28日) 

(3) 高岡浩三(2019)「経営者の仕事はパーパスを提唱し、実現すること」、『Harvard Business Review』、2019年3月号、P16、ダイヤモンド社 

(4) Harvard Business Review(2014年5月)「From Purpose to Impact」、https://hbr.org/2014/05/from-purpose-to-impact (最終閲覧日:2022年4月28日) 

(5) 井上和幸(2022年1月7日)「個人も問われる「パーパス」リーダー層の転職を左右」、https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM248G30U1A221C2000000?channel=ASH05018&page=3 (最終閲覧日:2022年4月28日) 


(Written by Mayu, Sustainable Business Enabler) 
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