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【Column】そのチャットの使い方、思わぬ指示待ちを生んでいるかも?

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Published: March 19, 2024
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2024.3.19

働き方の大幅な変化が起きたここ数年。TeamsやSlackなどのチャットツールを仕事上で用いることは、今や当たり前となりました。それに伴い、新しい部署に配属されたときや、新しい会社に入ったとき、まずはそこで採用されているチャットツールの使い方に慣れ、蓄積されている情報にキャッチアップする時間を取ることも必須となっています。

情報発信を一斉に、あるいは特定のメンバーだけをメンションしながら簡単にできる。チャットツールは非常に便利です。同時に、時々育成のご担当者から「新人が、自身の業務に関連する投げかけをスルーする」「情報は見えているはずなのに、自分事と捉えられず、指示待ちになっていて困る」というお話を伺うことがあります。どうしてこのような事態は起きてしまうのでしょうか。
 

「傍観者効果」を防ぐ指示の出し方とは?

オープンな場でのコミュニケーションで、重要情報のスルーが、悪気なく起きてしまう。これには「傍観者効果」が影響しているのかもしれません。傍観者効果とは、B.ラタネとJ.M.ダーリーたちが提唱した、緊急事態に直面した自分以外の傍観者が多いほど、援助行動を取る責任を感じにくくなる効果です。私は、この言葉を聞いたとき、過去のあるシーンを思い出しました。 

ある大型案件のデリバリー時、コーディネーターとして現場に10名近いスタッフが入ることになりました。ご存じの通り、私たちのデリバリーサイトは、屋外かつ広大であることが多いので、チャットも使いながら、大人数でのモジュールの準備を行っていました。私はリード役として、全員参加のチャットの場で指示出しをしていました。しかしこの時は、人手は十分に足りているのに、想像以上に業務遂行がスムーズにいきませんでした。結局私が一人走り回って、最終チェックやトラブルシュートをすることになったのです。

「少人数で一緒に案件を動かした時には、主体的に仕事に取り組むと感じた相手であっても、大人数になると、なぜ効果的に動くことが難しいのか」とこの時、強い疑問を抱きました。そして、改めて自分の行動を振り返ってみると、私の指示の出し方が、相手の主体性を損なうものだったのかもしれない、と思い至ったのです。

具体的には「他の案件で経験したことがあるし、あえて指名しなくても、このくらいは気づいてやってくれるだろう」という勝手な期待に基づいて、担当者を指定せずに、ざっくりとした指示出しをしていました。そのことが、指示を受ける側にとっては傍観者効果を強める、あるいは「名指しで指示されたら、その時やればいい」と感じさせたとしても不思議ではありません。そしてこれは、チャットツール内で、新人が直面しやすい環境とも似ているかもしれません。その経験以来、特にオープンなチャットでの指示出しを行う場合には、「誰が・何を・いつまでに・どのように」を明確にしての発信を意識しています。
 

権限・責任・報告を見える化するから、サポートも生まれる

また部署でも、関係者全員が見える場で、5W1Hに加えて①権限、②責任、③報告という3点を必ずチャットに明記するルールにしています。この3つのルールがあると、そもそもスルーができなくなります。そして、仮に本人に経験が足りなくても、当事者が明確なので、周りにいる先輩社員が「期限が迫っているけど、進んでいる?手伝いが必要なら、早めに声かけて」など、サポートの声掛けのしようがあります。そうした声掛けから、チーム内の連携や効率化が生まれることも増えてきました。逆に、新人が「間違えると恥ずかしいから」と個別チャットでこっそり聞いてくるようなことは、同じ間違いを次に別の新人が行う可能性が残るなど、チームの仕事の進め方としてはイマイチだと感じています。

リモートワークやハイブリッドワーク、またチャットツール活用により、同じ職場環境にいる機会が減ったことで、「隣の机の島で起きていることや先輩の電話応対を聞いて、その知見や技を身に着ける」という機会は相対的に減ったと感じています。しかし環境は変わっても、育成は続きます。

だからこそ、オンライン上の職場空間と言えるチャットツール内で、関係者全員に対してオープンに、当事者とその権限と責任を明確にして、依頼をする。依頼事項に対しては、報告の期限まで明確に設ける。日常業務の中で、この凡事をどれだけ徹底できているか。働き方やチャットツールの功罪というよりも、ツールの使い手側の行動が、新人や若手社員が主体性を発揮できる場を作るためにできることだと言えるのではないか。そう考え、私自身も引き続きトライ&エラーを続けていきます。

参考文献:山岸俊男(2001)「社会心理学キーワード」.有斐閣

(Written by YukiOperation Quality Controller)
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